田中智之
情報計算化学生物学会(CBI学会)第425回講演会として、「日本版AAASが日本の科学を元気にする!」というタイトルのもと、オンラインシンポジウムが8月27日に開催されました。
約60名の参加があり、講演終了後のパネルディスカッションでは興味深い話題が取り上げられました。
CBI学会は製薬企業をはじめとする法人も会員というユニークな特徴があります。
そこで、日本版AAAS (JAAS)が組織ではなく、個人に焦点をあてているというところから議論がスタートしました。
小野さんの講演のエピソードが注目され、大学の研究室ではなく、松山のまちなかのアーバンセンターという特別な場に研究者がいることで生まれる交流や、そうした仕掛けに対して投資が行われることの重要性がパネリストから指摘されました。
鶴田さんはご自身の神戸大学バリュースクールでの実践もからめながら、産学連携の可能性、またJAASがそこでどのような貢献ができるかという流れで、進行役として参加者からの意見を巧みに引き出されていました。
山形さんは講演では米国の本家であるAAASの活動との比較をはじめ、アメリカにおける科学振興の現状を紹介されました。
山形さんが指摘された産学双方にあるステレオタイプを乗り越えていく上でもJAASにおける対話が役に立つかもしれません。
柴藤さんは、クラウドファンディングの現在やアウトリーチ活動としてのクラウドファンディングの可能性について紹介されました。
産学連携のファンディングプロジェクトの中に「民」という要素が加わることによるポジティブな変化は、JAASにおいても期待できるプラスの側面だと思いました。
斉藤さんからは、政府、アカデミア、産業界、市民が参加する形で社会を変えていくという国際的な意識の高まり、フューチャーセンターのような特別な対話の場の役割、一方でJAASが目指すべき大きな組織としての役割についての議論がありました。
大学は、教育と研究という役割に加えて、近年では社会貢献という機能が期待されています。
しかしながら、高等教育への予算の投入はOECD平均の半分で、2.5兆円不足しているという見方もできるとのことです。
2.5兆円…気持ちよく投入していただくにはどうすれば良いでしょうね。
私(田中)はシンポジウム世話人として、終了後のオンライン懇親会にも参加いたしましたが、CBI学会側の演者やサポートいただいたみなさんからは、JAASの今後への期待をうかがうことができました。
今後もCBI学会並びに医薬分野との連携を継続したいと考えております。
講演
「日本版AAASの紹介」小野悠(豊橋技術科学大学、JAAS委員長)
「米国のAAASにみる産学の関係、そして日本の課題」山形方人(ハーバード大学、JAAS委員)
「大学インキュベーションの活動と日本版AAASヘの期待」鶴田宏樹(神戸大学、JAAS委員)
「ダイナミズムの可能性を探る①−クラウドファンディング」柴藤亮介(アカデミスト、JAAS委員)
「ダイナミズムの可能性を探る②−分野横断のキャリア開発」池森恵(日本製薬工業協会、エーザイ)
「ダイナミズムの可能性を探る③−地方創生×科学」斉藤卓也(文部科学省、JAAS委員)
総合討論:演者+六嶋正和、山崎一人
日本版AAAS設立準備委員会の公式ポストです。