第3回意見交換会(8月28日)を開催しました!

日本版AAAS設立準備委員の高野です。先日よりメールやTwitterなどを通じてお知らせしていた通り、8月28日(土)に「第3回意見交換会」を開催致しました。一般からご参加頂いた14名の方々に加え委員17名、延べ31名で意見を交換する機会となりました。

第1回の開催では、日本の科学が抱える問題点や、それらを解決するために私たち日本版AAASに出来ることはなにかを、様々な観点から議論しました。多様なご意見を頂き、私たちにとって非常に有意義な機会となりましたが、その一方で、様々なトピックについて議論をしたため、心ゆくまで議論に望めなかったという声も上がりました。そこで今回は話題をある程度限定し、京都大学の宮野公樹さんをお招きして「学際研究」について皆で対話しました。

議論内容

宮野さんに「学際研究」について、ユニークな手書き文字のスライドで発表して頂きました。その後、参加者は7つのグループに分かれ、それぞれが発表を聴いて感じたことなどについて、1時間にわたり対話しました。最後に、全グループが集合し、それぞれのグループが対話の内容を発表し合うことで、対話を通じて感じたこと・新しく気づいたことについての情報を共有しました。

以下にそれぞれのグループにおける対話の内容をまとめました。クリックしていただくことで、対話のまとめと写真が表示されます。どのグループでも多くの意見があがり、活発な対話がなされました。

– グループ1

【ルームの中で行われた対話の内容】

  • 新しい・側面・アプローチを学べた。
  • 内閣は、FACTを基にしたリーダーシップをもっと出して欲しい。今のところ限られた選択肢の中で上手くやっている点は評価する。
  • 欧米の基準ではなく、日本の基準でコロナ対策をしなくては。

【対話の中で皆で新しく見つけられたこと】

  • 学際研究の歴史を学んだ(森壮一さんが詳しく解説してくださった)。
  • ”専”門家なのだから、謙虚になって、他の分野の話を聴くこと。
  • 学際という分野があるわけでなく集団で考えることが肝要で、実際、ひとりが全ての科学に通じる事は難しい。
  • アカデミアは「学問」と「科学」を分けていらっしゃるが、一般にはその区分けが分かりにくい。
  • 「科学」の、人類的な定義を今一度考えることが大事だということ。
– グループ2

【ルームの中で行われた対話の内容】

  • 学問の種類にも分析思考と包括思考といったような異なる考え方がある。そのような分野・専門の属性に加え、気の合う者同士かどうかということも“学際研究”の成功に大きくかかわってくると考えられる。
  • 学際研究自体が目的であってはいけないが、新しい方向性を見つけるために利用することには可能性を感じる。
  • 学際研究において何が起こっているかをあらためて認識できた。ほかの分野・立場の人たちと対話・協同していくうえでは言葉選び・言葉の意味の共有が必要であると感じた。

【対話の中で皆で新しく見つけられたこと】

  • 新しい方向性をみつけるために、学際研究を場として用いることには可能性がある。
  • 学際研究とはどのようなものか、どのような問題があるかを知ることができ、異分野間のコミュニケーションの重要性が感じられた。
– グループ3

【ルームの中で行われた対話の内容】

  • 根本に戻る意味の学際と研究領域や技術の学際など、学際の意味が色々な状況によって違う。
  • 根本に戻ることは必要だが、現時点で非常に多くの知識が蓄積されていて、追いつくには労力がかかる。食べていくためには論文等を出版する必要があるという点では効率的でない。
  • アカデミアと企業の学際のとらえ方は踏み込んで考える必要がある。民間の研究者が置いてけぼりになるのは勿体ない。

【対話の中で皆で新しく見つけられたこと】

  • 大学では根本に立ち返り、考えを深めていく学際が有効である。一方、企業ではできた知識を利用する集めて行う学際が有効である。このように求める学際が異なるということを見つけた。
  • ただし、「本来、私たちは何をするべきか」という立場に戻って考えることが重要であることは共通している。
  • その姿勢が今まで積み上げてきたもののブレイクスルーに繋がるため重要である。
– グループ4

【ルームの中で行われた対話の内容】

  • 「これは学際だ」と一義的に定義するものではない。「問い」を追究する営みが学際なのでは?
  • 自分でテーマ、課題を設定して、調査して発表し議論するという機会、教育が日本の学校ではあまりない。そういう教育を推し進めていく必要性。
  • (学際系の学部教育での広く浅く学ぶスタイルについて)大学で学んだからにはベースとなる分野を持つはず。最初から根無し草であってはいけない。個々人がそれぞれ一つの専門分野を持った上で、違う分野の人との協働が始まる。あまり「学際」という言葉に引っ張られる必要はない。

【対話の中で皆で新しく見つけられたこと】

  • 自分にとって魅力的で、強烈な問題意識を見つけるためには、問いや課題を自分事化する、あるいは自分事として捉える必要がある。
  • 「問い」に適切に取り組むためのアプローチ、手段を見定める能力をどう教育(大学も含めて)が伸ばしていくかは議論の余地がある。
– グループ5

【ルームの中で行われた対話の内容】

  • 流行りでない分野、裾野も育てて欲しい。
  • 自身の看板を挙げることが大切。

【対話の中で皆で新しく見つけられたこと】

  • 大学院での教育(スクーリング)をもっとしないといけない。
  • JAASでも学問の幅広いところを捉えてくれる組織になって欲しい。
– グループ7

【ルームの中で行われた対話の内容】

  • デジタル社会でも好奇心を燃やせば、新しいことが生まれるのではないか。
  • 意識的にその場を作っていく。新たなものを作っていくために。

【対話の中で皆で新しく見つけられたこと】

  • 具体的なサイエンスに落としていくことで新しいことに繋がっていく。
  • 研究の形はいろいろあっていいと思います。多様性を認めることが重要。
  • いろんな場でいろんな取り組みをしている。
  • 好奇心を持ち続けることが、研究者にとって大切なこと。いろいろなレベルで。
– グループ8

【ルームの中で行われた対話の内容】

  • リスペクトを持ってお互いに対話することが大事。
  • 分断の壁を壊すためにはどうすればいいか?
  • 学問は開かれている。
  • 問いの共有はみんなフラットである。
  • 報告の方法は研究者が慣れている。
  • 研究をしなくても学問はできる。
  • 隠れた前提条件を見つけることができた。大学に限った話ではない。
  • 学際研究は申請書のため?

【対話の中で皆で新しく見つけられたこと】

  • 問いは,誰が持ってもいいし,誰が発信してもいい。
  • 学問はみんなに開かれているもの。大学の研究者だけではない。
  • 科学コミュニケーターは分断の壁を壊す存在としての可能性を秘めており,広く問いを共有できる存在になりうるかもしれない。

– 参加者へのアンケート結果

ご参加頂いた一般の方々のうち、9名がアンケートにご回答くださいました。主要な項目について記述します。

【ご参加された理由を教えてください(複数選択可)】

9名中9名(100.0%)が、「提供された話題『学際研究』に関心があったため」ご参加くださったことがわかりました。

【総合的な本イベントの満足度】

1(とても不満足だった)から5(とても満足した)のスケールで満足度を評価して頂き、平均値は3.56 となりました。

【項目ごとの満足度】

「とても不満足だった」「不満だった」「普通」「満足した」「とても満足した」について評価して頂きました。総合的な満足度に比べて項目ごとの分散は大きいものの、平均して「普通」を下回る項目はありませんでした。総合的な満足度と同様の数値換算で、すべて項目におけるすべて回答の平均値は3.70、標準偏差は0.90でした。

【今後の開催時の参加意志】

これに関しては、9名(100%)全員が「はい」を選択されました。

第3回意見交換会では、十分に議論を深めるだけの時間がなかった第1回開催の反省を活かし、限られたテーマについて議論を行いました。結果として、参加者の皆様により満足して頂くことが出来、おかげさまで私達日本版AAAS設立準備委員会にとっても有意義な機会になりました。今後も定期的に開催する同様のイベントを通じて、わたしたちの科学振興活動について知り、ご賛同・ご参加いただければ幸いです。